4月に同じ平成館に「日本国宝展」を見に来たときは、
平日にもかかわらず本当にすごい人だった。
土日だと数時間待ちだったかもしれない。
今回も休日は、かなりの人出だろうと予想して平日に出かけた。
僕がなぜこんなに人出を気にするかというのは、典型的な「A型」人間で、
美術館などはある程度以上の混雑になると、
とても落ち着いてじっくりとは見られない性質なのだ。
混雑していると列が三重くらいになっていて、背の低い僕などは、
なかなか鑑賞する位置までにたどり着けない。
やっとの思いで作品の正面に達しても「A型」は小心者でもあるので、
横隣りのおばちゃんが肘をあててどんどん押し迫ってきたら、
気になってそそくさとビュウポイントから退場せざるを得ない。
列の後ろからでも見える大きな彫刻や絵画でも、
気に入った作品は、離れて全体を見たり、
近づて細かいところを観察したり、ぐるりと廻ってまた戻ってきたり…
いろいろしたいのだが、混雑していると思うように動けず、
時間ばかりが経ってしまう…。
また大きな絵画の場合、映画と同じで画面に人の頭が入ると、
どうしても構図が遮られているようで集中できない。
ましてや空間と作品を一体として鑑賞することが多い現代美術の場合は、
余計に気になってしまう。例えば、マーク・ロスコの大作シリーズなどは、
人の少ない空間で鑑賞すれば、かなりイメージが違ってくると思う。
また、今回の展覧会のように工芸品など宝物や書・巻物などは、
ガラスケースに展示されていることが多い。
ガラスに付着した鼻の油が妙に気になったり、
茶碗などをじーっとながめていたら、ガラスケースの向こうから、
やはりじーっと見つめているおじさんと目があってしまい、
いったい何を見ているかわからないようになってしまう…。
そんな神経質な「A型」人間とは逆に「B型」人間は、
そういうわずらわしいことはまったく気にならないらしい。
以前「B型」人間の人といっしょに、かなり混雑した展覧会に出かけたとき、
僕はやはり集中できず、日を改めてもう一度来ようと思っていたら、
その人は「いや~すごく良かった…」と詳しく絵の感想や細かい部分に
関して話はじめた。僕が「絵の前のたくさんの観客の頭が気になって、
全然見た気がしなかった…君も他人の頭の間に埋もれてたじゃないか。
見えなかったところ、けっこう多かったんじゃないの?」と尋ねると、
その人曰く「私は想像力で乗り切る!」ときっぱり答えた。
つまり「B型」人間の彼女の場合、どんなに周囲が大混雑していても、
気に入った作品の前ではものすごい集中力と想像力を働かせて、
画面の前に居並ぶ頭も視界から完全に消してしまい、
作品を納得のゆくまで存分に鑑賞してしまうのだ。
この「B型」人間の「想像力で乗り切る!」の前に、
僕は完全にひれ伏してしまった。本当にすごい!
中国人にもこの「想像力」という言葉がぴったり当てはまる。
比率的にもB型が多いのかもしれない。
黄河流域に初めて文明を築き、春秋戦国時代を経て統一帝国を打立て、
様々な王朝の盛衰を経て現在に至るまで、
中国の人たちは長い長い歴史をこの「想像力」で乗り切ってきたのだ。
このような「とんでもないモノ」を作り上げてしまう力の源は「技術」や
「信仰心」、「感性」といった言葉ではひ弱すぎる…。
きっと「とんでもない想像力」を常に働かせていたのであろう。
そして、どんな苦難の時代にあっても偉大な文化を築き上げながら、
力強く生きてきた自信が、現代中国の原動力として受け継がれているの
かもしれない。