絵描きの記

絵描き 出口アキオの絵画制作と日々考えたこと、見たことの記録です。

「栄光のオランダ・フランドル絵画展」 ~東京都美術館~

フェルメールの「画家のアトリエ(絵画芸術)」は、僕が1996年にヨーロッパを訪れた際、所蔵しているウィーンの美術史美術館へ行ったら、貸し出し中になっていた。現在はどこに行っているのかと係員に尋ねると、「ハーグだ」と答えが帰ってきた。その後ハーグで見る予定だった「フェルメール展」では、「確かこの作品はリストに入っていないはずだったのだが…」となんとも不思議に思いつつもその場を後にした。そして結局、アムステルダム国立美術館でも、ハーグのマウリッツハイス美術館での大規模な「フェルメール展」でも、この作品を目にすることはなかった。

あのとき、「画家のアトリエ(絵画芸術)」は一体どこへ行っていたのだろうか…。

僕は、これが見たくて再びウィーンに行きたいと真剣に考えていたくらいだから、

とりあえす今回、東京での展覧会開催を知ったときは、なによりもうれしかった。

展覧会開催初日の朝8時半過ぎに行くと、門の前に既に観客が少し並んでいたが、予想していたほどではなかった。開館と同時に一目散に目当ての「画家のアトリエ(絵画芸術)」へ。それは2階の一番奥、最後の展示だった。

僕が一番乗りだった。美術館の係員の人たちがまだ作品を見ていた。

しばらくの間、作品と一対一の贅沢な空間と時間が流れる…。

新聞の取材か後方で何度もシャッターの音がした。

そんな音もやがては耳に入らなくなるほど、画面の中に入り込んで行った。

その後もそれほど混雑することもなく、他の作品群を鑑賞してから再び戻ってきても、尚且つゆっくりと見ることができた。

「画家のアトリエ(絵画芸術)」はフェルメール作品の中でも大きい方だが、やはり、ルーペを持ってくるのを忘れたことを後悔した。当然ギリギリまでは近づけないので、細かいディティールを観察するにはひたすら目を凝らすしかなかった。神戸での展示もあることだし、細部のチェックは次回にしようと考え、今回はなるべく作品全体の印象をとらえることに徹した。

あと、ニューヨークのフリックコレクションや盗難されて現在行方不明の「合奏」など、まだ見ていない作品も数点あるが、ヨーロッパの美術館が所蔵しているフェルメール作品は、 これですべて見たことになった。