絵描きの記

絵描き 出口アキオの絵画制作と日々考えたこと、見たことの記録です。

「カンディンスキー展」 ~東京国立近代美術館~

美術の中でやはり絵画に一番興味が惹かれる。

もちろん、これまでに彫刻や伝統工芸、デザインなどにも魂を揺さぶられるような

作品はたくさん出会った。

しかし、僕の中で絵画は神聖な領域である。

ゆえに画家は永遠に崇高な仕事であると思うし、それが巨匠と呼ばれる人たち

となると、その手による作品と対面し、鑑賞すること自体神聖なことなのである。

絵画の神聖さを感じた作品、例えば、レンブラントの「夜警」やベラスケスの

ラス・メニーナス」、フェルメールの「デルフト眺望」…。

これまで僕の中でカンディンスキーは、画家であってもどちらかというと「絵画学」

を追求した学者的なイメージが強かった。

しかし今回の展覧会を見て、まったく考えが変わった。

カンディンスキーは「現代絵画」を極めた最も神聖なる画家である。

確かに実験的精神に基づいた作品は彼の膨大な作品群の中核をなす。

しかし、トレチャコフ美術館所蔵の大作2点「コンポジションⅥ」と「コンポジションⅦ」

をはじめとして、この展覧会の作品には現代美術が陥りがちな概念や思想だけで

こねくり回した頭でっかちな印象がこれっぽっちもない。

非常にタフで潔い現代絵画として仕上がっている。

絵の向かいにあるベンチに座って眺めていると色彩とフォルム、マチエルが激しく

せめぎあっている中、様々な具体的なイメージが浮かび上がってくる。

見れば見るほど発見がある。

アムステルダムやプラドでの至福の時間を思い出した。

色彩のセンスもただただ関心するばかり…

それぞれの作品がテーマに即した抜群の配色、色彩設計が施されている。

今回の展覧会に出品されたのは、1910年代から1920年頃までの作品が中心。

第一次世界大戦を挟んで画家が故郷のロシアとドイツを行き来しながら、

最も脂の乗った活動時期であったのかもしれない。

ゆっくり鑑賞した後は、併設のカフェレストランで昼食とる。

天気も良かったので、テラスでカタログを見ながら、くつろげた。

かなり葉桜になっていたが、向かいの皇居のお堀でスケッチもした。

この美術館、改装してほんと良くなったなあ…。