谷川俊太郎氏の「ひとり暮らし」(思草社)という本の中で
氏が「サウンド・アート=音というメディア」という展覧会を
見た(聞いた)あとの感想を書かれていた。
「…もしこれも『アート』なら、アートが目指すはずの美というものは
どこに行ってしまったのだろうと私はいささか古風な感慨にふけった…」
僕はこの展覧会に行っていないが、
他の展覧会で氏と同じような感想をもつことはよくある。
「美しさ」の概念は時代によって変化があるのに異論はない。
しかし、「アート=芸術」は「美しさ」の追求
あるいは「美しさを感じるこころ」の追求ではないかと思う。
近年のアートのなかには、「美の追求」など
とっくの昔に放棄してしまったような感がある作品が多い。
日常生活のなかでは嫌というほど
「人間の作った醜悪なモノ」を見せ続けられているので、
もっと堂々と「美しさ」自体を追求するアートが出てきてほしいと切望する。