飯田橋駅から徒歩5分くらい日中友好会館内にある美術館。
以前勤めていた会社の取引先がこの建物の中にあったので,
一時は足しげく通ったものだが、美術館へは今回が初めてだ。
中国第9回全国美術展受賞者の中からの選抜展らしい.。
女性人民解放軍兵士を描いた作品(ほんの10年くらい前までなら,
男勝りの勇ましい姿を描いていただろうが、この作品の兵士は、キュート
で魅力的だ)、周恩来元首相の肖像を掲げた列車、現代中国の指導者
を描いた作品などはお国柄だが、そのスタイルは現代的センスに
溢れていて、決してイデオロギーに基づいて描かされているのではない。
(現体制への批判を込めた作品もあったが、そういった作品ですら
ネガティブアプローチではなかった。なぜか明るいのだ)
本当に各作家が対象に興味を抱いて表現していることが、
どの作品からも伝わってくる。
また、中国の伝統様式に基づいた美人画にも惹かれた。
この作品は人物の描き込みと背景の表現に少し違和感があったが、
共同制作になっていたので人物と風景を手分けしたのかもしれない。
それにしても迫真の描写力だ。しかも作者の生まれが1972年と1976年に
なっていたので、ふたりともまだ若い。
この若さでここまで高度なテクニックを身に付けているとは…。
さすが米粒の先にもお経を書いてしまうだけのことはある。
しかも10億人以上のなかから選抜されているのだ…。
中国の唐時代をはじめとする伝統絵画を例に挙げても、
書き込み方が非常に細かい。
日本の絵画が江戸時代まで出来るだけ画面から、どんどん余分なものを
取り払ってゆくことによって対象の本質に迫ろうとしたのに対して、
中国絵画は、これでもかというほど細かく描き込んでゆく。
水墨画を比べてみてもその差はよくわかる。
今回の展覧会は、そうした伝統的な写実力を基本にしながらも国の開放
政策によって好きな画題を選び、自由に描くことができるようになった
中国人作家たちの喜びの声が作品から聞こえてくるようだった。
絵を描く情熱と力を改めて教えられたような気がして刺激になった。
少し気になったのが、ギャラリーに収まりきれなかった作品が地下の
会議室や宴会場に展示されていたことである。
場所の問題であろうが、少し気の毒だった。