絵描きの記

絵描き 出口アキオの絵画制作と日々考えたこと、見たことの記録です。

コンビニを考える

「コンビ二さえあれば、なにもいらない」

シアトル・マリナーズイチロー選手の言葉。

サッカー・ワールドカップでの長い合宿生活から開放された日本代表の一人、

アレックス選手が「今一番したいことは?」という問いに対しての答えが

「コンビニに行きたい!」

それほど今の若い人にとってコンビニは、なくてはならないモノなのだ。

僕が若い頃は、既に田舎でもいたるところにコンビニがあったが、

基本はマンガや雑誌を立ち読みしたり、パンや飲み物を買う場所であって、

僕自身「コンビ二さえあれば…」などとは考えたこともなかった。

今となってはマンガも雑誌もあまり読まないし、

食料品はスーパーや市場で買い求める。

この季節、冷たいお茶を時々買う以外は、あまりコンビ二へは立ち寄らない。

足が遠のいた理由のひとつにコンビニの店内の「におい」がある。

あの「おでんのにおい」だけは決して食欲を誘わない。

店によっては、入ったとたん「失礼します」と思わず辞してしまうこともある。

また大学生の頃、コンビにで買ったサンドイッチに中って、数日間苦しんだ。

コンビニのおにぎりを食べるたびに、

夜中までむねやけに悩ませられることもあった。

白ご飯でさえお湯をかけると油のような膜が浮く…。

ご飯粒に「テカリ」をだすためにワックスのようなモノを塗布してあるらしい。

ラベルをよく見ると、合成保存料、柔粘剤、着色料、なんとかナトリウム…

一体なにを食べさせられているのかわからないので、以後一切買わなくなった。

僕が今住んでいる東京の下町近辺にはコンビ二がなかった。

一番近くでも坂を下って徒歩10分くらい、それも元は酒屋さんといった感じで、

大手のチェーン店系列ではなかった。

スーパーも駅前に昭和30年代からある年季の入った店が一件あるだけ、

あとは商店街の個人商店だ。

酒屋さんもビールの販売の主力は「カン」ではなく、今も「ビン」である。

引っ越してきた当初こそ多少不便にも感じたが、

慣れると全く普通で苦にも感じなくなった。

この町は夜が暗い。

危ない暗さではなく、どこか安心できる暗さだ。

周りはお寺と地元の民家ばかりで、玄関が開けっ放しになっている家も多い。

ステテコ姿のおっちゃんが横になってテレビを見ているのが丸見えだし、

おばちゃんが軒先で仕事や学校から帰ってくる人たちに声をかけている。

毎朝、日蓮宗のものすごい迫力のお経で目覚めるし、車の通行量も多いが、

今や日本の街中のいたるところに発生しているスプレー缶の落書きなどは、

ここでは一切見かけない。

子供たちも都会独特の拗ねた感じがない。明るく元気だ。

そんな町にもついにコンビニができた!ついでにファミレスまでできた!

オープン初日の夜、新規開店ファミレスに足を踏み入れると、

かなりの盛況だった。

一人は僕ぐらいで、ほとんどは地元の家族連れ、お年よりも多い。

みんな家での夕食団欒の雰囲気のまま楽しくやっている。

寺内貫太郎一家」の食事風景みたいだ。

この町は学生や外人の家族も多いのだが、今夜は赤ちゃんが泣き止まなくて、

なかなか食事が採れない白人と日本人の夫婦以外は見かけなかった。

階下のコンビ二でもオープニングセールでそれなりに入っていたが、

「見るだけ見ていこうか」と言って、

入っていったおばちゃん二人の会話には笑った。

やっぱり珍しいのか…

最近完成した大手ゼネコンが建てたマンション、完成までかなり揉めていたが、

そこの住人などは大歓迎なのであろう。

僕もコンビニができることになって正直「これで便利になるな」と思っていたが、

いざオープンしてみると、

「日本中がコンビニやファーストフード、ファミレスだらけなのに、

なにもここにまで進出しなくてもいいじゃないか!」と思ったりもしている。

夜はちゃんと暗くなる。

少しばかり不便でもそれなりに安心で快適な東京の下町を

四六時中薄気味悪い蛍光灯とネオンでむやみに明るく照らさないでくれ…。

地元の人たちはこの不夜城の出現を歓迎しているのかな?

便利になってよかったと感じているのならそれに越したことはないけど…。

「なんかイマイチしっくりこんなぁ…」と思いつつも、

半額だったので思わず梅おにぎりとシュークリームを買っちまったよ!