リドリー・スコット監督の最新作。
まず第一に感じたのは、傑作「ブレードランナー」との類似点だ。
例えばローマ市外を俯瞰で見るシーンは「ブレードランナー」の冒頭シーン、
近未来のLAとオーバーラップした。また巨大なコロセウムはピラミッド型の
タイレル社ビルを連想したし、皇帝マルクス・アウレリウスが息子のコンモドゥスに
殺害されるシーンは、タイレル社社長が、レプリカントのロイに惨殺されるシーンを
意識していたのではないだろうか。まあそれだけリドリー・スコット監督も
「ブレードランナー」に並ぶ作品にしたいという思い込みがあったのであろう…。
兵士の甲冑・投石器などの兵器や元老院議員のトゥーガの着こなし等、
歴史的考察を十分に行ったと窺えるセットや衣装作りこみも非常に丁寧だ。
塩野七生の「ローマ人の物語」によると、乗馬の際、使用する鐙は、
中世での発明品で古代にはまだなかったらしい。
テレビのドラマなどではローマの戦闘シーンや三国志の中国でも騎士は
堂々と鐙を取り付けて駆けているけど、この映画ではラッセル・クロウもスタント
たちも鐙なしで馬に跨っていた。落馬しそうでさぞかし大変だったろうに…。
最後の五賢帝マルクス・アウレリウス役のリチャード・ハリスは決まっていた。
僕が想像していた「老哲人皇帝」にあまりにもイメージがピッタリだった。
その息子コンモドゥスのバカさ加減を見事に演じたリバー・フェニックスの弟
ホアキン・フェニックスも良かった。こちらはもっとワイルドな感じをイメージ
していたので、ライオンの毛皮なども頭から被ってほしかったが…。
後半コロセウムでの決闘シーンは編集でカットしたのか、
ちょっと尻すぼみだったが、リドリー・スコット監督久々のクリーンヒットは、
大満足であった。
それにしても、こうして映画や本などによって知れば知るほど、
現代のアメリカ合衆国という国が、いかにローマ帝国を国家運営のお手本に
しているか…非常に納得してしまう…。