最初にタイトルだけ知ったときから興味がそそられた。
舞台は第二次世界対戦前後のイタリア中部トスカーナ地方。
トスカーナの町々の美しい風景を、イギリス人のちょっとシニカルな
ユーモアセンスでくるんで、アメリカ人の憎めない滑稽さを
少しふりかけたような小粋な作品。
ムッソリーニのファシスト軍がフィレンツェの町中で大暴れしている最中、
ウフィッツィ美術館の有名なボッティ・チェルリの「春」の前で、
主人公のおばさんたちが優雅に午後のティータイムを楽しんでいるシーン
は笑ってしまうけど、そんな戦争という極限の社会情勢に関わらず、
自分たちの日常生活を楽しむスタイルを貫いていて、
観ているこちらの心も豊かにさせてくれる。
いよいよナチスが敗色濃厚になって、サンジミニャーノの礼拝堂を
爆発させようとしたとき、内部のフレスコ画をコツコツと修復してきた
修復師の苦労を知っている仲間のおばさんたち(イギリス人のちょっと
気位の高いおばさんが先頭に立って)が、建物に体を縛ってまで
命がけで守るシーンや、騙されて一文無しになったユダヤ系アメリカ人
を必死に協力して安全な場所まで逃がしてあげるシーンなどなど…
思わず笑っても、その後すぐ自然と涙ぐんでしまう…。
国や人種を超えて、芸術を愛する精神と反戦へのメッセージが随所に
込められた素晴らしい映画だった。