夜、NHK「美と出会う」の再放送を観ていたら、
漫画家の赤塚不二夫氏が出演していて、
目の不自由な子供たちのために作った点字マンガを紹介していた。
絵本になった点字マンガの第1部は既に出版されており、
現在は第2部を制作中とのこと。
点字マンガが学習教材として使われている盲学校を訪れた赤塚氏に
ひとりの子供が訪ねた。「なにを教えてくれる先生ですか?」
「この本を作った先生だよ。まあ、先生ってほどじゃないけどね」
輪郭線を浮き上がらせたニャロメやウナギイヌを夢中になって
手触りで確かめている子供たちの表情を見ていたら、涙がこぼれた。
赤塚氏は入院中で出版の担当者とも病室で打ち合わせしていた。
がんと闘病中であり、長年のアルコールのせいもあってか、
バカボンのパパやケムンパスを描いても線が少し震えてしまう…。
しかし毎日毎日飲み続けて、様々な人々と出会い、語らうことによって
数々のギャグやキャラクターが生み出されてきたのだ。
まさに命を削りながらの仕事である。
そんな格闘の末に生まれたキャラクターが今は子供たちの指を伝って
新たな夢を膨らませている…。
「ものをつくる」ということが、
他者や社会とのコミュニケーションにおいてどう役立つのか。
別の言い方に変えればつくること(描くこと)によって
人を幸福にすることができるのか…。
今回の「美と出会う」のテーマはそんな問いかけにあったのかもしれない。
番組では同時に、イラストレーターの黒田征太郎氏の活動も追っていた。
二人とも活動の原点は重なり合う部分が多いと思う。
しかし黒田氏の場合、すごく情熱は感じるのだが、
「オレは描くことが大好き、楽しい。だからお前たちも楽しいだろ!」
みたいなちょっと強引な部分も感じられた。
その点、赤塚氏はコミュニケーションのとり方が非常に自然で、
氏が今打ち込んでいる仕事に対して、素直に共感でき、感銘を受けた。
描くことで他者を幸福にできる。そして、自分自身も解放される。
「うむ、これでいいのだ!」