絵描きの記

絵描き 出口アキオの絵画制作と日々考えたこと、見たことの記録です。

「幸せなひとりぼっち」

アマゾンプライムにて鑑賞。

北欧映画は私の中では名作揃いだ。

好きな映画ベスト10に確実に入る「バベットの晩餐会」やビョークの「ダンサー・イン・ザ・ダーク」など…。どんどんエンターテイメント化する一方で、心に残らない最近のハリウッド映画に比べたら、見終わった後の感激が深く長く残る作品が多い。

 

本作は、妻に先立たれた頑固おやじとイランからの移民女性を中心に近隣住民と心の交流を描いた作品。

スウェーデン移民問題は日本よりずっとシリアスだと思っていたが、こういった社会問題も大げさで偽善的になることなく、ユーモアを交えサラッと劇中に含ませている。

主人公オーヴェは幼い頃、誠実さの大切さを父から教わる。最愛の妻からはハンディを背負いながらも明るく生き、困難に取り組む強さを学ぶ。

「梯子を貸してほしい、怪我した野良猫の面倒を見てほしい、夫が入院したので病院まで連れて行ってほしい、車の運転を教えてほしい…」等々とにかくいろんなことをオーヴェに頼んでくるイランから嫁いできたパルヴァネ。彼女の行動は、妻を亡くして殻に閉じこもるオーヴェをなんとか外の世界に引っ張り出そうとしているかにも見える。

オーヴェ自身も今は偏屈で神経質、クレーマーに近いが、駅のホームから落ちた人を助けたり、若いときには火事で燃えさかる家から住人を一人で助け出したり、積極的に揉め事にも介入していく正義感の強い男だ。

特に印象に残ったシーン…

パルヴァネに運転を教えている最中、執拗に何度もクラクションを鳴らす後車の若造を車から引きずり出し叱責した後、テンパる彼女に「イランの戦場からここにたどり着き、言葉を覚え、だめ男とだが結婚して、2回の出産に耐え、今3人目を授かっている…そんな君なら運転くらい何でもないはずだ」とオーヴェが励ますところ。

彼の優しさが垣間見える。

 

個人的にはグローバリズムや多様性、共生といった言葉が苦手だ。

普段こういう言葉を流行語のように口にする人やメディアから独特の「軽さ」を感じる。その背景にある深刻な問題やデメリットを同時に語らないからだ。

よく海外で住む人が「この町は日本と違って個人に干渉しない、放っておいてくれる…」などと言っているが、実はそれは「あなたがまだ客人扱いで本当の住人として認められていないのでは…」と勘ぐってしまうときがある。

その町、その国で共に生きるとは、時にお節介するし、干渉もする…。

だけど孤独にはさせない。他者への無関心こそが一番よくないことだ。

この映画を見て改めてそんなことを思った。

急激にグローバリズム化する日本で、「異文化・異種との共存・共生、多様性」を推奨するのなら、「アンチ無関心、お節介の奨励」のスローガンも同時にセットでアピールすることが必要ではないかと思った。

 

www.amazon.co.jp

 

akioの絵はこちらへ(iichiのショップ)
akioの絵はこちらへ(Creemaのショップ) 

 

ランキングに参加しています。

よろしければポチッとお願いいたします😊

にほんブログ村 美術ブログ 油彩画へ