絵描きの記

絵描き 出口アキオの絵画制作と日々考えたこと、見たことの記録です。

クリムトの技と芸術に感動

今日は午後、制作をしながら、

NHK BS 「プレミアム8<文化・芸術>シリーズ巨匠たちの肖像 

クリムト 黄金にきらめくエロス」を見る。

その前にやっていた棟方志功はあまり面白くなくて、

絵を描くBGM的にテレビをつけていたのだけど、

クリムトの方は番組の完成度が高く、非常に面白かった。

クリムトの作品には予てから西洋と日本美術の融合を感じていたのだけど、

番組ではそのあたりのことが詳しく紹介されていた。

モザイク画の技法には、ラヴェンナ東ローマ帝国時代に作られた

モザイク壁画に根源があること、

蒔絵や螺鈿の技法やウィーン万博で紹介された様々な日本の伝統工芸や

尾形光琳の作品の構図に影響を受けていたこと、

また、江戸時代の衣装や文様がアレンジされて用いられていたこと、

作品中に散りばめられたエジプトやギリシャ神話のエピソードなど…

とても興味深かった。

クリムトは多くの作品で金にこだわり、金細工を自ら自由に操った。

番組内で最も印象的だったのが、

数年前、当時の最高値の156億円で売却されて話題になった

「アデーレ・ブロッホバウアーの肖像」を見ながら、

クリムトが用いた金の技法に対して、

現在のウィーンの金細工職人が語った言葉。

「この作品には様々な高度な金細工技法が使われている。

今の自分たちにはもうこれだけの技術を

持ちえていない…」というようなことを言っていたこと。

クリムトの技術は現在の技術を持っても、

既に再現不可能なほどほど高度なものだったのだ。

そんな卓越した技術を完成させ、芸術家としての地位も確立クリムト

なぜか晩年は「金細工技法」を封印してしまう。

エゴン・シーレなど息子に近い新しい世代の画家たちの台頭に対して、

自らの芸術が既成概念の芸術に対して批判が出発点だっただけに、

その才能を素直に新鮮な感動として称えた。

同時に「俺もまだまだ若い奴らには負けない、

今までの技術に拘らない新しいことを始めよう…」

「金の封印」にはクリムトの画家としての

健全で素直なライバル心もあったのかな…。

技術も芸術家としての心意気も…

クリムトはどちらいにおいても超一流だったんだなあ…。

十数年前にウィーンを訪れたときには分離派会館は閉まっていて、

見れなかったのは今でも心残り…。

戦災で消失したウィーン大学の天井画は、現在写真パネルになっている。

なんとか復元できないものかとも思うが、それだけクリムトの技術が高くて、

再現は不可能なんだろうなあ…。

などなど感動したことを書きなぐってみたのだけど、

こんなスケールの大きい作品や

作家の超人的な仕事ぶりを垣間見てしまうと、

すごいと思うと同時に、

自分自身の現実と比べて気落ちしてしまうこともある。

例えば、一つの作品を完成させるまでの

膨大なデッサンをはじめとした仕事量を見ただけでも…

自分の作品はなんとも「どんなものだろうか…」

と思うのだけど、いつもは…

でも今日は「本当に素晴らしいものは、古今東西に関わらず素晴らしい!」

と感動したとと同時に、

「これからも自分なりに作り続けていこう…」と、

なんだか描く勇気がむくむくと沸いきた。

というわけで、今日は偶然にいいモノが見れて幸せ…。

もし興味のある方は、再放送などがあれば、ぜひ見てください。

プレミアム8<文化・芸術>シリーズ巨匠たちの肖像▽クリムト

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