絵描きの記

絵描き 出口アキオの絵画制作と日々考えたこと、見たことの記録です。

「ブライアン・ウィルソン スマイル・ツアー・ジャパン 2005」~東京国際フォーラムホールA~

ブライアン・ウィルソン3度目の来日公演。題して"SMiLE TOUR"である。

30年近くも続いた引きこもり生活を終えての99年初来日は、正直言って「ライブなんて出来るんだろうか」という不安があった。だから実際にステージに上って歌い始めたときはその現実自体に感動した。

2度目の2002年は"Pet Sounds Tour"、世紀の名盤を全曲ライブ再現という離れ技をバックのサポートにも支えられ見事に成し遂げた。

そして今回、37年目にしてついに完成した幻のアルバム"SMiLE"のライブ再現…

期待は否応にも高まった。

ステージはアコースティックセットで幕を開けた。

オープニングは"Surfer Girl"、頭から息を呑むほど美しく調和のあるコーラスだ。

続いて"Wendy"、"Add Some Music To Your Day"、"Please Let Me Wonder"…

それにしても素晴らしいハーモニー、バンドの進化と自信が随所に窺える。

8曲目の"Sloop John B"からはメンバーは所定の位置につき、フルバンドセットでの演奏となる。ブライアンはよく声が伸びていて、安心して聴けた。

お馴染みの"Don't Worry Baby"、"California Girls"に続いて"God Only Knows"では弦楽五重奏団が加わった。

その後"SMiLE section"でも加わるのだが、あまりストリングスの音として響いてはこなかった。もっと前面に出してほしかったなあ…。

"Sail On Sailor"、 "Marcella "で第1幕は終了。

休憩15分を挟んで、第2部"SMiLE section"が始まる。

"Heroes And Villains"、"Surf's Up" …に続いてアルバム中盤から後半はシュールな世界が展開する。

メンバーが動物の鳴き声を口真似で再現したり、電気ドリルやトンカチ、メガホン、金属かプラスチックの板をペラペラさせたり、また弦楽五重奏団員はセロリや大根など野菜を振り回し、最後は消防士のヘルメットを被り、ステージ上では炎のオブジェがめらめらと揺れる…。横山ホットブラザーズも顔負けという感じだった。

アルバムの内容をきっちり理解していないとちょっとついて行けない世界かも…。

で、最後は"Good Vibrations"、隣で熟睡していた女性もここで一気に目覚めた。

アンコールは"Do It Again"、 "Help Me, Rhonda"…"Barbara Ann"、そしてすっかりお決まりになったパフォーマンス。ブライアンがベースを抱えた。

曲は"Surfin' U.S.A."、" Fun Fun Fun"と続きラストへ。

2度目のアンコールはこれまたお決まりの"Love And Mercy"をアカペラで…。

やはり3回目にしてブライアン自身もステージ慣れしたようだが、何よりもバンドのメンバーがブライアンの音楽を心から尊敬していて、ものすごく愛情を込めてサポートしていることを改めて実感させられた。

ツアープログラムが売切れだったので、バンドのプロフィール詳細は分からないけど、基本的なメンバーは前回と変わっていないのかな。

ギター&ヴォーカルのジェフリー・フォスケット、前回の来日時は70年代のブライアンの如く太っていたのだけど、今回は本人と見間違うくらいスリムになっていた。

キーボードのダリアン・サハナジャはメンバー紹介の中でも観客の拍手と歓声が一層高かった。アルバムやライブでの貢献度が高いのだろう。

ステージ上にはメンバーが何度か立ち代り入れ替わったが、ブライアン・ウィルソンと彼の音楽を此の上なく愛する総勢20名近くのミュージシャンたちによる競演…

音楽で結ばれた心の絆に胸を熱くできた夜だった。